発信主義。:「抱えるくらいなら、発信【発進】せよ」 **** mistyの目に映る様々な社会現象を、考察・検討を通してグダグダ考えましょう。
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この書物の中で語られ(かつ重要な事柄であ)ることはあまりにも多いのだが、この小考で捉えたいのはただ一つ、フーコーが指摘した、”狂気”の形態の変遷である。
私の無理解かつかなり大雑把な要約を許してほしいのだが、”狂気”(あるいは非理性)の形態の変遷とは次のようなものだ。
古典主義時代、ルネッサンス期までの西欧社会においては、狂気の形式はある程度未文化、いわばカオスの状態であった。<阿呆船>に乗せられる人々は精神病者のほか、道徳的に許されざる者、犯罪者、身体的病人、酔っ払い、など、実に様々である。しかし、それがだんだんと分化=カテゴリー化されてきたのが、17世紀以降の近代の時代であった。精神病(心的病なるもの)は精神病院か感化院へ、犯罪者は国家監獄へ、酔っ払いは道路の上へ。20世紀・21世紀において考えられているような狂気/異常 の形態=形式は、もともとバラバラであったのでは決してなく(例えば、精神病者/犯罪者/社会不適合者といったような)、歴史の流れの中で徐々に構築され(若しくは構築して)ていったということ。未分化なものから異化されたものへの変遷。
以上が短い要約であるが、あまりに当たり前すぎると思われる方もいるかもしれない。しかし、この指摘は誰でもできるようなものではなかった、フーコーの実に独特な方法によってまさに”発見”された一つの社会における思考一般のカテゴリであるといえよう。
私が簡単に述べたいのは、ここからである。 フーコーは、狂気(非理性)の様々な諸形態にただ単に着目し、その流れを記述したわけではない。(というよりそのような方法ではとうてい「狂気の歴史」を捉えることはできない。)そうではなく、彼はいつも狂気のいわば反対側にある、正常(理性)との関連において、”狂気”を考察していったということである。
正常=理性/異常=狂気
狂気が、精神病者の方が何やら「特別」とか「変わったもの」とかのように見えるから、事態に一種の霧がかかっている。そうではない。むしろ、精神病者や犯罪者や社会不適合者は、「特別」とか「変わったもの」とは全く無関係の次元において捉えられなければならない。
狂気を規定するのは、とりもなおさず正常(値)の側の方である。権力者が、非権力者を規定し、内包したり除外したりする。同じように、正常者・理性的なるものが、狂気や異常といったものの諸形態を、規定していったのである。
ではここで問わなければならないことはというのは、明確である。そうした「正常なもの」「理性的なもの」とは、どのようにして形成されてきたのであろうか?ということだ。正常/異常 の分割線は、どのようにして、誰が、もしくはどのような場合に、いつ、形成されるのだろうか?
『狂気の歴史』においてフーコーがまず直面しなければならなかったのは、そのようなことであった。正常/理性/正義/真理 の考察なくして、この探求は完遂しえない。
フーコーはよく、「真理などというものは存在しない」という発言をしたことで知られている感があるが、そのような存在論ではなく、フーコーは、時代時代や各分野における真理の形式(や正義/正常/理性)がどのようにして形成されているのか、その過程の方をいつも注意深く目を凝らしていた。その厳しい姿勢は彼の短い人生において変わることは一度もなかった、と、他の著作を通しても言えるだろう。
もうそろそろ締めくくりに入るのだが、つまりは、『狂気の歴史』で展開された一つの図式、狂気/正常(異常/正常)というこの区別は、非常に曖昧でぼんやりしたものである、だからこそ社会学はこれらをとりあえず”区別”する必要があるのだ。それは、こうした二項対立が自明のものであることを一つも意味しない。そうではなくて、そういった二項対立的な思考をそうたらしめている要因とか背景とかは何であるのか、その探求がとりもなおさず大切であるということである。かくして、②項対立の強制的・悪魔的な思考は、自由を得る。不自由から解放される。 『狂気の歴史』は、そんなことを教えてくれた。
以上
misty@
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