発信主義。:「抱えるくらいなら、発信【発進】せよ」 **** mistyの目に映る様々な社会現象を、考察・検討を通してグダグダ考えましょう。
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神田 初朗
私は閉じる。あぁ、安息の世界。それは私に、同時に暗鬱をもたらしてくれる。
目を閉じる。口をつぐむ。耳を塞ぐ。豊かなヴェールで身体をゆったりと包み込む。
<全テノ穴ヲ、閉鎖セヨ。>
私は、安らかな眠りに抱かれている。母の温かさを思い出す。父の厳格さを忘却する。
奥へ、奥へ。内部の、そのどんどん奥へ。
深みに踏み込んで、私は息もできない程の、マリンブルーやダークグリーンに染められた中心に導かれる。
誰かが私を呼んでいる。認識はできるのだが、何と言っているのかは分からない。つまらない、些末な言説。
深海へ、深化して、私は痛くもない、切なさもない、空っぽの心を胸に刻み込む。懐かしい声。固められた記憶。変化のない、無限の静けさ。
あぁ、多分、ここにおいて私は死んでいるのだ!
私は開ける。たちまち澱んだ空気が外へ放出される。素早くて賢い粒子と、長ったらしい関係性への参加が、私の内にどんどん流入してくる。
目を開ける。口を開く。耳を澄ます。汚れた幾つもの衣服を剥ぎ取って、裸同然で私は世界の現前に立ち向かう。
<全テノ穴ヲ、開放セヨ。>
私は、目もくらむばかりのまばゆい光に飲み込まれる。そこではスピードと、フレキシビリティと形容されるあの一連の暴力性が要請されるのだ。
彼が、私を呼ぶ。彼女が、私を揺り動かす。私は、別の私に呼びかける。
あぁ、目まぐるしくて。速く、速く、そして美しくて。
何物かが、私も知らないうちに、私の中にどかどかと入ってくる。それらの幾つかは依然として私の内部にとどまり続け、やがて私と一体となる。
そうなれば、世界は私なのだ。大胆な言い方をすれば、私は世界となる。
外へ、外へ、拡がって、傷ついて。
しばらく、私は私を見つけられない。オレンジとウルトラマリンブルーの色彩で形成されるこの環境の中において、全ては手の内をさらけだし、結合し、離反し、また進んでいく。私など、存在しない。いや、そうではない。
あぁ、多分、ここにおいて私は生きているのだ! 絶え間ない動きの中で、形を変容させながらも、私はどこかで息づいて、そして誰かがそれを見て「お前は、お前だよ」と指示してくれるのだ。そして、<私>は存在しうる。
閉鎖と開放の狭間。幾つもの美しさと汚さを、幸福と不快を、宝物と傷跡をめぐって、流動する。誰も彼も、存在しないかのように。
<世界ヨ、流動セヨ。>
(了)
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